「プロセラルム可能態」10 R18

Ⅹ パトリック・リード
今日もまた、彼女を抱いた。
十代の若い肉体は、間の子の獣の血を持て余し飢えた子のように貪欲に俺を求めた。
「パト、リック……もう、動いて……はやく……」
「駄目だ」
浅瀬を先端の括れで弄びながら、ゆるゆると緩慢に乳房を揉んだり脇腹を撫でたりして焦らす。まだ若く芯のある乳房は揉みしだくうちに張りが出て掌に弾力を返す。色素の薄い肌に見合う桜色の乳頭がふるふると震え固く隆起していく。指先で摘んで左右に揺すると泣き出しそうな顔で少女は鳴いた。先端を埋め込んだ膣口はとめどなく液を溢れさせ、欲する硬い侵入者を飲み込もうと何度も健気に息づくように締め付ける。鈴口の敏感な部分を埋め込んできつく締め付けられているのだから、気を抜くと精を吐き出してしまいそうだった。だが、まだ足りない。緩やかに揺する動きを入れながら、浅い壁を擦っていく。
「もっと……おねがい、パトリック……つらいよ……」
首を左右に振ってねだる少女は浅ましく唇を開いた。口づけを欲する唇に指を突っ込むと男根に奉仕するがごとく指先を舐めしゃぶった。口の中を弄びながら、不意に強く内壁の急所を肉槍で叩いた。
「んぐっ……!!ひっ、あっ、あ、そこ、だ、めっ……!」
緩慢な愛撫のなかで探り当てた秘芽の裏の急所は面白いくらい効果覿面だった。何度も押しつぶすように男根で責め立てるとがくがくと膝を震わせ鳴き声をあげる。欲していた物を不意打ちで与えられ、突然の快楽の奔流に少女は溺れかけていた。
相性がいい、とでも言うのだろうか。男根を奥の方まで割り込ませると根本まで埋まり、括れの張り出したところが彼女の弱いところを丁度良く刺激する。快楽を求めて締め付ける狭い肉は、男根を絞り上げるように熱い襞で愛そうとしてくる。最奥まで埋めるだけで動かずとも好いところから甘い欲望が溢れ出て、潤滑となってまた男に血を集めさせる。
もはや半分泣き出しかけているのか、過呼吸の喘ぎのまま少女は脚を絡め俺の腰をより深く刺さるように抱き寄せた。深いストロークで入り口から子宮まで余すところなく抉る動きに、恥もなにも掻き捨てて咽び泣いた。
「ひっ、いい、パトリ、っく、それ、きもちい……っ!ああ、もっと、おくっ……!ちょうだい、イっちゃ、うっ……!」
処女のときとは比べ物にならないくらい柔らかく解れた膣肉は、その身をすべて使って精を求めてうねる。何度も重ねた身体は互いの特異点を知り尽くし、自らの急所を晒して欲望の果てに手を伸ばす。
「あっ、あああっ!はげし、あ、やだ、ふくらんでっ……!なか、イって……!いっしょに、ひ、あ、あああああぁっ!」
仰け反るように指先まで硬直して少女が狂う。頃合いだ、そう判断して先程までの熱い抽送を突然止めた。
「え、あ、なに……っ?え、あ、やだ、なんで、パトリック……?」
「そう簡単に好くなれると思ったか」
言葉に熱が籠もらないように注意深く、しかしよく聞こえるように呟く。こうしている間にも絶頂寸前の膣肉は懸命に精を欲して締め付けてきているのだ。暴発しないように気をつけながら極めて緩やかに壁を擦り続ける。
「欲しいものがあったら、お願いするのが筋だろ。……お前は、どうして欲しいんだ」
限界寸前まで持ち上げられ、お預けをされた少女はその大きな瞳からぽろぽろと涙を流し始めた。理性はとうに蒸発したのか、泣きじゃくりながら絶頂にたどり着かないギリギリの快楽に喘いで言葉にならない叫びを漏らしている。
「や、だ……イカせて……っ、ぱとりっく、……ひぐっ、だめ、めちゃくちゃにして……」
「それがお願いする態度か?」
指先を結合部に伸ばし、秘芽を強く摘む。少女の身体が大きく跳ね、声も出せずに突然の刺激に浅い絶頂を迎えた。そのまま包皮を指先で剥き指紋の凹凸で最も敏感な箇所を責め立てるとまるで打ち上げられた魚のように白い手足ががくがくと震えた。
「ひ、あぁっ、ごめんなさ、ひぃあああっ……!こわし、ひぐぅっ……!こわして、ぱとりっく、すき、すきですっ……!!パトリック、こわしてっ、くださ、ああぁっ……!ぼくを、めちゃくちゃにして…!!」
もう限界をとうに超えて浅い絶頂ばかりを与えられた少女の焦点は合っていない。目の前の男に隷属し、ただただ与えられる悦びに窒息しかけている哀れな少女。嗜虐心が満たされるのを感じ、唇を舐める。こちらとしてもずっと耐えてきた欲望が限界だった。痙攣の度に熱い肉に射精を強請られ、我慢の限界も近い。
「……いいぞ、イけよ……雌兎……っ……壊れちまえよ、ハイネ……!」
最奥を強く叩きつけると、涙と涎でぐちゃぐちゃに汚れたハイネが一際高く鳴き声を上げた。待ちわびた深い絶頂の暴力的な快楽に、声にならない叫びをあげて縋り付いてきた。
「ひ、あ、ああああああっ……っ!!」
腕の中で仰け反るハイネの腰を掴み、最奥で今まで耐えてきた欲望を解放した。子宮を押しつぶすように抱き締めながら薄い膜の中に精を放つ。脈打つ欲望がすべて出し切るまで吐き出し、ゆっくり引き抜くと避妊具の中に欲望の残渣が白く濁って溜まっていた。

沸かした湯を浴び、身体を清めて行為の名残をすべて洗い流す。されるがままに服を纏う白い横顔に灰色の髪が煌めく。
「最近、とっても眠いんだ。身体が怠くて……このまま、溶けてしまいそうな」
呆けた表情もそのままに宙を眺める少女の頬に触れると、細く小さな指を添えて目を伏せ呟く。
「……僕はあなたが憎い。でも、あなたのことを見ていたい。わからない。……あなたの心が欲しくてたまらないんです」
愛おしげに俺の指に頬を寄せるハイネの顔は、もはや少女ではない。色に溶けた、女として彼女は柘榴の瞳を潤ませている。……頃合いだと思った。この、関係の。
「……俺の祖母は、人じゃない」
何を言わんとしているのかわからない、という顔でハイネは目を瞬かせた。それも無理はない。だが、無理矢理にでも理解させなければならない。引導を渡すのだから。
「……魔女と呼ばれる、神の分霊だ。だからハイネ。お前が惹かれるのは俺の心じゃない。……この魔性の赤い髪に惹かれているだけだ」
さっと顔色が変わった。鈍い彼女にも、俺の言いたいことは伝わったようだった。青ざめた顔で視線が俺の髪と俺の瞳を見比べ唇を震わせる。
「……っ、違う!僕は、貴方が、本当に、すきで……」
「お前は無いものねだりをしているだけだよ。……お前の中は空っぽだ。悪いことは言わない。俺から離れろ」
「そんな、イヤだ、そんなこと、言って」
決壊寸前の瞳が水分を湛えてゼリー寄せのようにふるふると揺れている。頬を撫でていた手に縋り付こうとする彼女の腕からするりと抜け、届かない絶望的なまでに深い感情のクレバスを見せつけた。
「俺はお前を愛せない。魂が空っぽな、お前のことを」
……そう、これ以上愛させないために。

「君をここに呼び出した意味がわかるかな」
夜も更けたアイオリスの街には冷たい風が吹き抜ける。双子の月が冷たく微笑み、白い肌をその夜空に晒していた。月明かりに、少女の白銀の鎧が光る。首元の翼は、くすんだ輝きをもってその輪郭を見せていた。剣士の……いや、ノーシュの、鎧。外套のフードを頭から被り、ハイネは俺の行く手を阻むように待っていた。
「もう僕たちは限界だよ。……だから、パトリック。君を殺して僕も死のう」
外套の裾から長銃を取り出した少女の言葉を、俺は待っていたのかもしれない。低く響く言葉は、奇妙な安らぎをもって予想の的中を知らせている。
始めから、こうなるのだろうと思っていた。……この先も、どうなるのか。答えは、見えていた。だから。
銃声は、二発。
ゆっくりと……血飛沫を上げスローモーションのように地に倒れ伏したのは、ハイネ……いや、ハイネに扮したヨハネ、だった。
外套のフードが外れ、長いセリアンの耳が顕になる。髪は短く切ってしまったのだろう。こうして見ると本当に瓜二つだったのだと感じる。そして、自分が撃つより早く銃撃を受け、狙いの外れたヨハネは唇を震わせて俺を見上げていた。
「君たち!何をしている!」
騒ぎを聞きつけ、衛兵が駆け寄ってくる。血を流し倒れるヨハネを見、白煙を上げる銃口に気づいた衛兵たちは乱雑に俺の腕を拘束した。傷害事件だと叫ぶ衛兵たちの喧騒の中、石畳に頬を汚すヨハネは俺の方を見つめてチアノーゼの唇で呟いた。
「僕がハイネじゃないこと……気づいてたの」
「……俺の仕込んだ構え方じゃない」
そう返すと、一瞬面食らったような表情をした後、諦念にも似た笑みを浮かべ頬を歪めた。
「ちょっと予定が狂ったけど、でもこれで君は檻の中だね。……余罪は叩けばいくらでも出るはずだ」
「……お前はどうするんだ」
血の気の引いたヨハネは、喘息のような呼吸をしながら喉を鳴らして笑う。
「次の人生を楽しみにするよ。君と違って僕とハイネには次があるんだ。……それが僕らの世界だから」
目を閉じ、冷たい夜風に血の失せた肌を晒してヨハネは命の灯火が消えるのを待っていた。だが。
「……ヨハネ!」
「……アポロ?オルドリン……?」
黒い学生服のブラニーと、偏光の髪のセリアンが必死に駆け寄ってきた。ブラニーは状況を一瞬で把握し、即座に医療用の試験管を取り出しヨハネの出血部位に薬をかけ始める。
「待って、僕はもうここで死……」
「急所ははずしてある。……すぐに治療すれば命に別状はないだろう」
そのために、ここに来るようお前のギルドの奴らに教えたんだから。そう呟くと、今まで諦めたような……悟ったような表情をしていたヨハネが初めて感情をむき出しにして、睨みつけた。
「……パトリック、お前、わざと……」
「もう少し、この世界にいるべきだ。……妹が大事なんだろう」
衛兵に無理矢理腕を引かれ、半ば殴られるように連行されていく。きっと、今後会うことはないのだろう。恐らく、檻の外には出られないのだという確信があった。だからこそ、彼女とはこれでいい。
「ハイネは……俺の人生を変えた女だからな」

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